「家長」という死語をうまく使う女性
橋田壽賀子の『渡る世間は鬼ばかり』の最終シリーズがはじまった。
昨日(10月21日)の放送分を見ていて、ひとつ気になったことがある。
五人姉妹の長女、弥生(長山藍子)が
「『家長』はアナタなんですから、アナタから嫁に強く言ってください!」
という意味の台詞に、である。
ご存知のように「家長」という制度は、法律上は今は存在しない。
同時に「家長」という言葉も死語になった。
ところが、である。
女性は都合のいいときに
「家長はアナタなんだから」
という言い方をする。
女性の立場がすこしでも向上するように、との願いを込めて廃止された家父長制。
それを女性は逆手にとり、男性に皮肉をいいたいときに、この家長という言葉を使うのだ。なんと、したたかで、おそろしい戦略だろうか。それまで威勢のいい演技をみせていた弥生のダンナ役の前田吟は、その瞬間、顔を引きつらせて困っていた。これはどこの家庭でも、ある一幕ではないだろうか。
うるさい男を黙らせるのには、これ以上の台詞はないであろう。
ちなみに。ある辞書によると
「家長とは、一家の主」とある。
また、ご丁寧にも
「父が亡くなり兄が家長となる」
との用例まで載っている。
もうおわかりだろう。
この用例は、間違いである。
いまどき、こんな使い方はしないからである。
古くはドリフターズの荒井注、そして最近では斎藤紳士というピン芸人が、「THIS IS A PEN」という英語の文を「そんな例文覚えて、どこで使うねん」と芸でバカにしているが、まさにそれが、「父が亡くなり兄が家長となる」という例文である。
そこでおすすめの用例が、ドラマにあるように
「家長はアナタですから、しっかりしてください」である。
国語辞典監修のエラ〜イ大学の先生!
どうか、橋田壽賀子先生に習い、実際に辞書に使われている正しい用例を、日本人に広めるように努力してください。
使われない、実際には使用できない用例を弟子に作らせて、ノーチェックでそのままOKしないように(笑)。
最後に。
家長はアナタなんですから、と言われグウの音も出なくなっているあなた。
「そうか」と納得して、自分の意見を通したいときに
「家長はオレだぞ」とは絶対、言わないように。
妻の猛反発を食らうこと、請け合いです(笑)。
高木伸浩
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