単行本『ひそやかな花園』を読んで
『ひそやかな花園』角田光代著
毎日新聞社刊 1500円
★★★★☆
私は毎日新聞をとっているので、この小説は日曜版に連載されていたのですが、作者の作品を読んだこともなく、大した人ではないだろうと、勝手に思いこみ、ノーマークでした。
今年のはじめにNHKで放映されたドラマ『八日目の蝉』をみて、いたく感動した私は角田光代を、一流作家と認め、以降は作品をマークしていこうと、思っていた矢先、この本がでたので、なじみの本屋さんに注文してもってきてもらいました。
彼女の作品の特長は、文章も、人物描写も「こんなところまで書くか」というぐらい、すばらしい筆致で進んでいくことですが、それよりも五感をこえた「感情」のようなもので読者をゆさぶります。
もっというと、魂がゆさぶられるのです。
自分という存在は何か? 家族とは何か? 父とは何か? 母とは何か?
これらのテーマをこれでもか、これでもか、というぐらいに読者に問い詰めてくるのです。
まるで、のど元にナイフを突きつけられているかのように......。
内容をここで詳しく述べると、皆さんの楽しみを奪ってしまうことになるので、詳しくは書きませんが、テーマは体外受精です。とくに夫婦で男性の精子に問題がある人が、他人の男性の精子をもらって、妻が子を宿すのは、倫理的にどうか、ということが物語の進行とともに、論じられていきます。
近いテーマを扱ったものに海堂尊氏の名作『ジーンワルツ』がありますが、こちらについても読了していますので、近いうちにこちらのページにアップしたいと思っています。
それにしても、角田光代はすごい、と思わせる作品です。
うちの事務所では、「井上雄彦のマンガと、東野圭吾の本がでたら、無条件でもってきてください」と出入りの本屋さんにいつもお願いしているのですが、角田光代氏も、そのリストに加えようと思っています。
この作品はドラマというよりも、映画になってほしい作品です。
高木伸浩
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