京極夏彦『絡新婦の理』講談社刊を再び読んで
私の会社の場合、編集と執筆をさせていただいていることもあり、仕事関係の本、そして個人的に購入した本で少し油断すると本で部屋中満杯になってしまいます。
そんなこともあり、個人的な本は保存するスペースはとぼしく(仕事関係の本や資料は3年間保管しています)とくに推理小説などは、1回読んでしばらくすると、まとめて古本屋に売りに行ったりしています。あんまり、ボクが売る本が多いもので、ある古本屋さんは、店頭すべて、私の本で埋まってしまったこともあります(実話です!)。
売りにいくのは家内の役目ですが
「あんたんとこは、ホンマにええ本、読んでるな~。これはよう売れるで」
と店主からよく褒めていただいておりました。
話がそれましたが、そんななかでも、古本屋に売りにいかない作家が何人かいます。
それも推理小説です。ストーリーも種もしっているのに。
ご存じ、京極夏彦です。
だれもが言っていることですが、とくにいいのは処女作『魍魎の筺』から6作目『塗仏の宴』です。
私が最近読んだのは第五作『絡新婦の理』です。600ページほどもある大著ですが、引き込まれたように一瞬で読めてしまうでしょう。
こんな作品を書いてしまったら、ほかの推理作家はどうしてしまうだろう。おそらく打ちのめされて創作意欲はでてこないんじゃないかというほどの素晴らしい本です。
京極の作品がいいのは、犯人とか、トリックとかは、あまり気にならないところです。それよりも文章自体に文学的価値があります。
とくに本書の冒頭の数十ページの「犯人」と「主人公」との対話シーンは、何度読んでも感動ものです。一度読み終えたあと、もう一度、読むと、よけいにぐっときます。
京極夏彦をまだ1冊も読んでいない――という人は、ぜひ一度、読んでみてください。
私はおそらく、この作品を死ぬまでにあと2~3回は読むでしょう。
ノブヒロ
★★★★☆
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