鷲田清一著『じぶん・この不思議な存在』を読んで
2010/02/16
「自分磨き」「自分探し」などという言葉が雑誌や書籍の
表紙を踊る現在、
どの人も自分とは何か、他人にはない自分らしさとは
何かを探し求めているような気がします。
そんな答えのない問いに一緒に挑み、
悩もうというのがこの本のスタンス。
一個人としての等身大の表現でかかれており、
どの年代の人も共感できる内容だと思います。
個人的にはこの問いについてよりも、
「言葉というのは恣意的なものなんだなあ」という感想を
強く持ちました。
たとえば「好き」という感情でいえば、
もともと不安や期待、安らぎなど
いろいろな感情が混ざり合ったものに
「す・き」
というラベリングをしただけであって、
その内実は人それぞれちがうものですよね。
そういう意味で言えば、
この本で問題になっている「じぶんとはなにか」はもちろん、
「人生はどうあるべきか」から「どこからが浮気か」まで(笑)、
すべては主観に照らして解決されるべき問いなのかも
しれません。
合理的であること、客観的であることが
よしとされる現代の風潮ですが、
こういった根元的な問題については
あえて個人の主観を重視することも
必要なのではないかと感じられた一冊でした。
★★☆☆☆