速水敏彦著『他人を見下す若者たち』を読んで
2010/02/09
読後最初に想起されたのは、
20世紀最悪の事件ともいわれ、
多くの人々を震撼させた地下鉄サリン事件でした。
その衝撃を処理しきれなかった多くの人たちが、
この事件を
「一部の精神障害者が起こした事件だ」
という、逃げの論理に帰結させたことは記憶に新しいでしょう。
しかしこの本を読んで、実はこのような心理は
すべての人の心の奥底に存在しているのではないか、
と思わされました。
著者によると、若者が他人を見下すのは
「仮想的有能感」を得るためであるということです。
つまり、他人を下にみることで相対的に
自分の価値を上げ、虚偽の自信によって
壊れそうな自尊心を保っている、というのです。
自分たちの真理を解せない社会のほうが
馬鹿なのだから、「ポア(殺害)」して当然だ。
有能な信者たちがこういったオウムの考え方に共鳴したのは、
何も精神的に破綻しているからではなく、
仮想的有能感を満たしてくれる
場所だったからではないでしょうか。
とはいえ仮想的有能感は所詮「仮想」のものです。
このような悲劇が二度と起こらないようにするためにも、
多くの人が自分の心を見つめ、
本当の意味での自信を身につけられる
ようになればいいと思いました。
★★★☆☆